こんにちは。屋根屋のカズさんです。
屋根のリフォームを検討していると、見積書のなかに「ルーフィング」とか「下葺き材」とか「防水シート」といった見慣れない項目が出てきて、これは何なんだろうと引っかかる方が本当に多いです。屋根材のように表から見えるものではないので、イメージが湧きにくいのも無理はないかなと思います。
ただ、私が20年以上現場に出てきた経験から言わせてもらうと、家を雨から守っているのは屋根材そのものではなく、じつはこのルーフィングのほうなんですよ。ここが劣化していると、どれだけ立派な瓦やガルバリウム鋼板を載せていても雨漏りは止まりません。実際、雨漏りの調査で屋根をめくってみると、原因は屋根材ではなくルーフィングのほうだった、というケースが本当に多いんです。
この記事では、屋根のルーフィングにどんな種類があるのか、それぞれ何年くらいもつのか、交換にはいくらかかるのか、そしてどのタイミングで交換すべきなのかを、現場の目線で正直にお話ししていきます。防水シートの選び方や下葺き材のグレードで悩んでいる方が、読み終わったときに自分の家の屋根で何をすべきか判断できる状態になることを目指して書きました。
- ルーフィングが屋根のなかで果たしている役割
- 種類ごとの耐用年数と価格の違い
- 交換にかかる費用の目安と工事のタイミング
- 施工不良を見抜くためのチェックポイント
ルーフィングの種類と耐用年数の基礎知識
ルーフィングとは何をする建材か
ルーフィングというのは、屋根材の下に敷かれている防水シートのことです。業界では「下葺き材(したぶきざい)」とも呼びます。屋根の断面を下から順番に見ていくと、まず家の骨組みである垂木(たるき)があって、その上に野地板という板を張り、その野地板の上にルーフィングを敷き、いちばん上に瓦やスレート、金属屋根材といった「屋根材」が載る。この三層構造になっているわけですね。
多くの方は「屋根材が雨を防いでいる」と思っておられますが、これは半分正解で半分不正解です。屋根材の役目は、降ってきた雨の大部分を受け止めて流すことと、紫外線や風、飛来物からその下を守ること。屋根材は基本的に「重ねて葺く」構造なので、瓦とかスレートの継ぎ目には必ず隙間があります。強い風をともなう雨、いわゆる吹き込みの雨のときには、その隙間から水が屋根材の裏側に回り込むんですよ。これはどんなに丁寧に施工しても、構造上ゼロにはできません。
そこで裏側に回った水を受け止めて、軒先へ流し出す役目を担っているのがルーフィングです。つまり、屋根材が一次防水で、ルーフィングが二次防水。この二段構えになっているからこそ、日本の家は台風や長雨に耐えられているわけです。
ルーフィングは幅1メートル、長さ20メートルほどのロール状の製品で、屋根の軒先側から棟に向かって、下から順に重ねながら張り上げていきます。水は上から下へ流れますから、必ず下の段の上に上の段が重なるように張らないといけません。この順番を逆にしてしまうと、重なりの隙間に水が入り込んで、そのまま野地板に染みてしまいます。当たり前のことのようですが、経験の浅い職人さんだとここを間違えることが実際にありますよ。
材質としては、昔から使われているのはアスファルトを紙に染み込ませたもので、現在は合成繊維の不織布をベースにした高性能なタイプも普及しています。見た目は黒い分厚い紙のようで、正直あまり高級感はないのですが、この一枚が家の寿命を左右していると言っても大げさではないかなと思います。
雨漏りの最後の砦と呼ばれる理由
私たち職人のあいだで、ルーフィングは「雨漏りの最後の砦」と呼ばれています。これは決して比喩表現ではなく、実務としてそのとおりなんですよ。
雨漏りの相談をいただいて調査に伺うと、お客様はたいてい「瓦が割れているんじゃないか」「スレートにヒビが入っているんじゃないか」と考えておられます。もちろん屋根材の破損が引き金になっていることもあります。ただ、屋根材が一枚割れたくらいでは、その下のルーフィングが健全であれば室内まで水は落ちてきません。水はルーフィングの上を流れて軒先から出ていくだけです。
逆に言えば、天井にシミが出るところまで水が来ているということは、その下のルーフィングにも穴が空いているか、破れているか、劣化して防水性を失っているということなんです。つまり室内に雨漏りが出た時点で、すでに二次防水は突破されている。だから「最後の砦」なんですね。
ここがポイント
雨漏りが室内に出た時点で、屋根材とルーフィングの二重の防水が両方とも破られている状態です。屋根材の補修だけで済ませようとすると再発しやすいのは、このためですよ。
もうひとつ知っておいてほしいのは、ルーフィングの劣化は外からまったく見えないという点です。屋根材は地上からでも双眼鏡で色あせやズレを確認できますし、ドローンでも撮影できます。でもルーフィングは屋根材の下に隠れているので、屋根材を実際にめくらないと状態を確認できません。屋根に上がって歩き回っても、見えるのは屋根材の表面だけです。
だからこそ、築年数からある程度推測して判断するしかない、という現実があります。「築25年、一度も屋根に手を入れていない」という家であれば、ルーフィングは間違いなく寿命を超えていると考えたほうがいいです。まだ雨漏りしていないとしても、それは運がよかっただけ、というケースは本当に多いんですよ。
そして、この見えない部分だからこそ、手を抜こうと思えば抜けてしまう部分でもあります。安いグレードのルーフィングを使っても、重ね幅を規定より狭くしても、完成してしまえばお客様には絶対にわかりません。悪質な業者がコストを削るときに真っ先に狙うのがここです。見積書に「ルーフィング」の項目と製品名が書かれているかどうか、必ず確認してほしいなと思います。
アスファルトルーフィング940の実力
日本でいちばん多く使われてきたルーフィングが、この「アスファルトルーフィング940」です。見積書に「アスファルトルーフィング940」「AR940」「JIS適合品」といった記載があれば、これのことだと思ってください。
この「940」という数字、意外と知られていないのですが、1平方メートルあたりの重さがおよそ940グラム以上ある、という意味です。JIS A 6005という日本産業規格で定められていて、原紙にアスファルトを浸み込ませて表裏を被覆し、粉末を付着させたものが規定されています。つまり940というのは製品名ではなく、規格の最低ラインを示す数字なんですね。
気をつけてほしいのは、これが「最低基準」だということです。JIS規格に適合しているというと立派に聞こえますが、実際には屋根の下葺き材として認められる最低限の性能、という位置づけなんですよ。
注意しておきたいこと
アスファルトルーフィング940の耐用年数は、一般的に10年前後とされています。屋根材のスレートが25年、瓦が50年以上もつことを考えると、下地のほうが先に寿命を迎えてしまう計算になります。
実際、私が葺き替え工事で古い屋根をめくったときの感覚でいうと、築15年を超えたアスファルトルーフィング940はかなり傷んでいます。手で持ち上げるとボロッと崩れる、タッカーで留めた釘穴のまわりが裂けている、アスファルト成分が抜けて紙のようにパリパリになっている。そういう状態が普通です。築25年、30年ともなれば、もはや防水シートとしての機能はほとんど残っていません。
なぜこんなに劣化が早いかというと、屋根の下は想像以上に過酷な環境だからです。夏場の屋根裏は60度から70度まで上がりますし、冬は氷点下まで下がる。この温度差でアスファルトが伸縮を繰り返し、揮発成分が抜けて硬化し、最後はひび割れていきます。紫外線こそ当たりませんが、熱と乾湿の繰り返しがじわじわとシートを痛めつけているわけです。
それでもアスファルトルーフィング940が長年使われてきたのは、単純に安いからです。材料費は1平方メートルあたり200円から400円程度で、上位グレードと比べても圧倒的にコストが低い。新築住宅で少しでも建築費を抑えたいときに、見えない部分から削られるという構図ですね。ただ、これから工事をされる方には、あえてこの最低グレードを選ぶ理由はほとんどないというのが私の正直な意見です。
改質アスファルトルーフィングの特徴
現在の屋根リフォームで主流になっているのが、この「改質アスファルトルーフィング」です。現場では「ゴムアス」「ゴムアスルーフィング」と略して呼ぶことが多いですね。
何が「改質」されているかというと、アスファルトに合成ゴムやプラスチック系の改質材を混ぜ込んでいるんです。これによってアスファルトの弱点だった温度依存性が大きく改善されます。夏の高温でもダレて流れにくく、冬の低温でも硬くなって割れにくい。しかも基材が原紙ではなく合成繊維の不織布になっている製品が多いので、引き裂き強度も段違いに高いです。
耐用年数はおおむね20年から30年。アスファルトルーフィング940の倍から三倍もつ計算になります。材料費は1平方メートルあたり400円から800円程度で、940と比べても実際の価格差は屋根一棟あたり1万円から2万円といったところです。工事全体の金額から見れば誤差みたいなもので、これで防水層の寿命が倍以上になるなら選ばない手はないかなと思います。
改質アスファルトルーフィングのなかでも、私が特にお勧めしたいのが「粘着層付き」のタイプです。裏面に粘着剤が塗られていて、剥離紙をはがしながら野地板に貼り付けていく製品ですね。
豆知識
粘着層付きタイプの最大の利点は、タッカー(ホチキスのような固定具)の使用を減らせることです。針で開けた穴が粘着層で自己シールされるため、釘穴からの浸水リスクが大幅に下がります。屋根の勾配が緩い家や、豪雪地帯では特に効果を発揮しますよ。
製品としては、田島ルーフィングの「マスタールーフィング」のような高耐久タイプが有名です。合成繊維不織布を基材にした改質アスファルト製品で、メーカーは一般品の約2倍の耐用年数をうたっています。日新工業の粘着層付き製品なども現場ではよく使われますね。ほかにもシバタ工業やニチハなど、複数のメーカーがそれぞれの特徴を持った製品を出しています。
ひとつ知っておいてほしい注意点として、改質アスファルトルーフィングはJIS規格に明確な規定がない、という事情があります。基材も構成もメーカーごとにバラバラなので、「改質アスファルトです」と言われても、実際の性能はピンからキリまであるんですよ。なかにはJIS940より軽量な製品もあります。ですから、見積書には「改質アスファルトルーフィング」という総称だけでなく、メーカー名と製品名まで書いてもらうのが確実です。そこまで書いてくれる業者は、それだけで信頼度が上がるかなと思います。
透湿ルーフィングと遮熱タイプの違い
もう少し上のグレードになると、「透湿ルーフィング」と「遮熱ルーフィング」という選択肢が出てきます。この二つは目的がまったく違うので、混同しないように整理しておきましょう。
まず透湿ルーフィングは、水は通さないけれど水蒸気は通す、という特殊な膜構造を持ったシートです。外壁で使われる透湿防水シートの屋根版だと思ってもらえればイメージしやすいかなと思います。素材はアスファルト系ではなく、ポリオレフィンなどの合成樹脂系がメインです。
なぜ水蒸気を通す必要があるのか。これは屋根裏の結露対策なんですよ。冬場、室内の暖かく湿った空気が天井裏に上がっていくと、冷えた野地板の裏側で結露します。従来のアスファルト系ルーフィングは水蒸気を完全に遮断してしまうので、湿気の逃げ場がなくなって野地板が濡れ続け、やがて腐り始めるわけです。透湿ルーフィングを使えば湿気が屋根の外へ抜けていくので、野地板を乾いた状態に保ちやすくなります。
耐用年数は製品によりますが、50年クラスをうたうものもあります。アスファルト成分が入っていないので、熱による劣化に強いんですね。特に断熱材を屋根面に入れる「屋根断熱」の家や、天井裏の換気がとりにくい構造の家では、透湿タイプを選ぶ価値が高いです。
透湿ルーフィングを選ぶときの注意
透湿タイプは通気層とセットで機能する製品です。棟換気や軒裏換気が確保されていない屋根に使っても、期待した効果は出にくいですよ。また、シート自体が薄く軽いため、施工中に強風であおられやすいという現場側の扱いにくさもあります。
一方の遮熱ルーフィングは、表面にアルミ箔などを蒸着させて、太陽の輻射熱を反射させるタイプです。屋根材を通過してきた熱が屋根裏に入るのを抑えるので、夏場の二階の暑さ対策として効果があります。耐用年数は製品によって20年から50年と幅があります。
ただ、遮熱ルーフィングだけで劇的に涼しくなるかというと、正直そこまで期待しすぎないほうがいいかなと思います。熱の伝わり方には輻射だけでなく伝導も対流もあるので、本気で暑さを減らしたいなら断熱材の見直しや換気の改善とセットで考えるべきです。遮熱ルーフィングは「ついでに効果があれば嬉しい」くらいの位置づけで、あくまで防水性能で製品を選ぶのが基本ですよ。屋根裏の暑さそのものに悩んでおられる方は、断熱材や換気の見直しとあわせて検討するのがお勧めですよ。
ルーフィングの種類と耐用年数で失敗しない選び方
種類別の耐用年数を一覧で比較
ここまで説明してきた種類を、耐用年数と価格帯で整理しておきます。数字はあくまで一般的な目安で、メーカーや製品、施工環境によって変わりますので、参考程度に見てくださいね。
| 種類 | 耐用年数の目安 | 材料費の目安(1平方メートル) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| アスファルトルーフィング940 | 約10年 | 200〜400円 | JIS最低基準。安価だが劣化が早い |
| 改質アスファルトルーフィング | 約20〜30年 | 400〜800円 | 現在の主流。温度変化に強い |
| 粘着層付き改質アスファルト | 約30年 | 600〜1,200円 | 釘穴が自己シール。緩勾配に強い |
| 不織布ルーフィング | 約30年 | 500〜1,000円 | 引き裂きに強く破れにくい |
| 遮熱ルーフィング | 約20〜50年 | 700〜1,500円 | アルミ層で輻射熱を反射 |
| 透湿ルーフィング | 約50年 | 800〜1,800円 | 湿気を逃がし結露を抑える |
この表を見ていただくとわかるとおり、いちばん安いものといちばん高いものでも、1平方メートルあたりの差はせいぜい1,000円台です。一般的な30坪住宅の屋根面積はおよそ70から80平方メートルですから、材料費の差額は屋根一棟でも数万円にしかなりません。
一方で耐用年数は10年と30年、場合によっては50年という差が出ます。10年ごとに足場を組んで屋根をやり直すことを考えたら、初期に数万円上乗せしてグレードを上げるほうが、生涯コストでは圧倒的に有利なんですよ。ここはケチらないほうがいい部分だと、20年やってきて心から思います。
選ぶときの考え方
屋根材の耐用年数と、ルーフィングの耐用年数をできるだけ揃えるのが基本です。50年もつ瓦の下に10年しかもたないルーフィングを敷いたら、瓦がまだ使えるのに全部おろして張り替える羽目になりますよ。
具体的な組み合わせで言うと、スレート屋根やガルバリウム鋼板の屋根なら改質アスファルトルーフィングで十分バランスが取れます。瓦屋根のように屋根材自体が長寿命なら、粘着層付きの高耐久タイプや透湿タイプを選んでおくと、次の大工事までの間隔を大きく伸ばせます。緩勾配の屋根や谷が多い複雑な屋根形状の家も、水がたまりやすいので上位グレードにしておいたほうが安心です。
ルーフィングの交換費用の目安
次に費用の話です。ここがいちばん気になるところかなと思います。
まず前提として、ルーフィングだけを単独で交換する工事というのは基本的にありません。屋根材をすべておろさないとルーフィングには手が届かないので、必ず「屋根の葺き替え工事」または「屋根材を一度はがして戻す工事」の一部として行われます。ですから見積書でも、ルーフィングは工事全体のなかの一項目として計上されます。
その項目単体の相場でいうと、施工費込みで1平方メートルあたり800円から2,000円程度が一般的な目安です。屋根面積70から80平方メートルの住宅なら、ルーフィング部分だけで6万円から16万円といったところですね。グレードを上げると上限側に寄っていきます。
ただし、実際に支払う金額はこれだけでは済みません。ルーフィングを交換するということは、以下の工事がセットで発生するということです。
| 付随する工事 | 費用の目安 |
|---|---|
| 仮設足場 | 15万〜25万円 |
| 既存屋根材の撤去と処分 | 1平方メートルあたり1,500〜3,000円 |
| 野地板の補修または増し張り | 1平方メートルあたり2,000〜4,000円 |
| 新しい屋根材の施工 | 1平方メートルあたり5,000〜10,000円 |
これらを合計すると、30坪程度の住宅で屋根の葺き替え工事全体としては80万円から180万円ほどが一般的なレンジになります。使う屋根材のグレードや屋根形状の複雑さ、既存屋根材にアスベストが含まれているかどうかでも金額は変わります。
アスベスト含有の可能性については補足しておきます。2004年以前に施工されたスレート屋根には、アスベストが含まれている場合があります。この場合は法令に基づいた飛散防止措置と特別な処分が必要になるので、撤去処分費が通常の1.5倍から2倍程度に上がります。築年数が古い家では、この費用が見積もりに含まれているか事前に確認しておいたほうがいいですよ。
なお、ここに挙げた金額はあくまで一般的な目安です。屋根の状態は一軒ごとにまったく違いますので、正確な情報は専門業者に現地調査をしてもらったうえでご確認ください。ネットの相場だけで判断せず、必ず実際に屋根に上がって見てもらうことをお勧めします。
交換できるのは葺き替えのときだけ
ここは非常に重要なポイントなので、しっかりお伝えしておきたいところです。ルーフィングを新品にできるのは、屋根材をすべてはがす「葺き替え工事」のときだけです。
屋根のリフォームには大きく分けて三つの選択肢があります。屋根塗装、カバー工法、葺き替え。このうち屋根塗装は屋根材の表面を塗り直すだけなので、ルーフィングにはまったく触れません。築20年で塗装をしても、ルーフィングは20年ものの古いままです。「塗装したから雨漏りは大丈夫」と思っておられる方がときどきいらっしゃるのですが、これは完全な誤解なんですよ。
カバー工法はどうか。これは既存の屋根材の上に新しいルーフィングを敷いて、その上に新しい屋根材を重ねる工法です。新しいルーフィングは入りますが、古いルーフィングと古い屋根材はそのまま下に残ります。つまり防水層は「新しい層+古い層」の二重構造になるわけですね。新しい層が上にあるので防水性能自体は回復しますし、工期も短く費用も抑えられる、非常に合理的な工法です。
カバー工法が選べないケース
ルーフィングだけでなく野地板まで傷んでいる場合は、カバー工法は選べません。新しい屋根材を留める釘が効かないからです。この状態でカバー工法をしてしまうと、数年で屋根材が浮いてきたり、かえって雨漏りが悪化したりします。
実際、私が現場で判断に迷うのはまさにここです。屋根に上がって歩いてみて、フカフカと沈む感触があれば野地板が湿気を吸って傷んでいる証拠。この場合はカバー工法をお断りして、葺き替えをお勧めします。逆に野地板がしっかりしていれば、カバー工法で十分対応できます。野地板の状態については野地板の腐食を放置するとどうなるかと修理費用の相場で詳しく書いていますので、あわせて読んでみてください。
どちらの工法が自分の家に向いているのか迷われている方は、屋根カバー工法と葺き替えのどちらを選ぶべきかの判断基準も参考になるかと思います。
つまり、ルーフィングの寿命を意識するなら「次に足場を組むのはいつか」を考えることが大事なんです。足場代だけで15万円から25万円かかりますから、屋根に手を入れるチャンスは家の生涯で何度もありません。そのタイミングで、外壁工事や雨樋の交換もまとめて済ませておくと、トータルの出費はぐっと抑えられますよ。
施工不良が招く早期の雨漏り
どれだけ高性能なルーフィングを使っても、施工が雑なら意味がありません。むしろ現場感覚で言うと、材料のグレードより施工の丁寧さのほうが雨漏りへの影響は大きいです。ここでは代表的な施工不良のパターンを挙げておきます。
まず重ね幅の不足です。ルーフィングは上下方向で100ミリ以上、左右方向で200ミリ以上重ねるのが基本ルールとされています。ところが材料をケチったり作業を急いだりすると、この重ねが50ミリしかない、といったことが起こります。重ねが浅いと、毛細管現象で水が重なりの内側に吸い上がっていくんですよ。特に屋根勾配が緩い家では、これが致命傷になります。
次にタッカーの打ちすぎと打ち方の乱れです。タッカーというのは大型のホチキスのような道具で、ルーフィングを野地板に固定するのに使います。当然ながら、打った数だけルーフィングに穴が開きます。目安としては300ミリ間隔程度で、必要最小限にとどめるのが定石です。ところが、風でめくれるのを恐れて必要以上に大量に打つ職人さんもいて、穴だらけになってしまうことがあります。しかもルーフィングの重なり部分ではなく、水が流れる平場の真ん中に打ってしまうと、その穴から直接水が入っていきます。
ありがちな施工不良
- 重ね幅が規定より狭い
- 上下の張り順が逆になっている
- タッカーを平場に打ちすぎている
- 谷部や壁際の立ち上げが不足している
- 雨天中に施工して野地板を濡らしたまま張っている
谷部や壁際の処理も要注意です。屋根が谷になっている部分や、壁に突き当たる部分は、水が集中して流れる場所です。ここではルーフィングを一枚多く増し張りしたり、壁面へ200ミリから300ミリ立ち上げたりする必要があります。この立ち上げが足りないと、横殴りの雨のときに水が壁との隙間から入り込みます。谷まわりの雨漏りは本当に多いので、私は必ず二重に張るようにしています。
そして雨天中の施工。これは論外なのですが、工期に追われて雨の日に野地板が濡れたままルーフィングを張ってしまう業者が実際にいます。濡れた木の上に防水シートを密着させたら、湿気が抜けずに野地板が腐り始めます。屋根工事は天候に左右される仕事なので、「雨だから今日は中止します」ときちんと言ってくれる業者のほうが、結果的には信頼できるんですよ。
施主の立場でこれらを確認するのは難しいですが、工事中に写真を撮ってもらうようお願いするのは有効です。屋根材を載せる前のルーフィングだけの状態を撮影してもらえば、重ね幅や谷部の処理があとから確認できます。まともな業者なら、頼まなくても工程写真を残しているはずですよ。
劣化サインと点検で確認すべき点
ルーフィングは屋根材の下に隠れているので、直接見て劣化を判断することはできません。ただ、間接的なサインはいくつかあります。ここを押さえておけば、手遅れになる前に気づけるかなと思います。
いちばんわかりやすいのは天井や壁のシミです。これが出た時点でルーフィングは突破されています。すぐに雨漏り調査を依頼してください。放っておくと野地板から垂木、さらに構造材まで腐食が進み、修理範囲がどんどん広がって費用も跳ね上がります。
次に屋根裏のチェック。点検口から懐中電灯で照らして、野地板の裏側に黒いシミやカビ、白い粉のような跡がないか見てみてください。雨の日の翌日に見るとわかりやすいです。屋根裏がカビ臭い、湿気っぽいという場合も要注意です。これは道具なしでご自身でもできる確認方法なので、一度やってみる価値はありますよ。
そして築年数からの逆算。これがいちばん現実的な判断基準かなと思います。
築年数の目安
築10〜15年でアスファルトルーフィング940は寿命を迎え始めます。築20年を超えたら屋根材の状態にかかわらず下地の点検を、築30年を超えていれば下葺き材の防水性能はほぼ残っていないと考えて工事の計画を立てるのが安全です。
他にも間接的なサインとして、屋根材のズレや浮き、棟板金の釘の抜け、雨樋に堆積した砂粒状の屑などがあります。屋根材が劣化して表面が削れてくると、その粒が雨樋にたまるんですよ。雨樋を掃除したときに砂のようなものが大量に出てきたら、屋根材がかなり傷んでいる証拠で、下のルーフィングも同じだけの年数を経ているということになります。
点検については、業者に依頼する場合でも「屋根材を一部めくって下地を確認してもらえますか」と伝えてみてください。表面を見るだけの点検と、実際に下地まで確認する点検では、得られる情報がまったく違います。もちろん屋根材をめくれば元に戻す手間がかかるので、無料点検の範囲では断られることもありますが、有料でもその価値はあると思います。点検の頻度や依頼のタイミングについては屋根点検の頻度とタイミングの目安にまとめていますので、参考にしてみてください。
最後にひとつ。「無料で屋根を点検します」と突然訪問してきて、その場で「ルーフィングがボロボロです、今すぐ工事しないと家が腐ります」と契約を迫ってくる業者には十分注意してください。前述のとおり、ルーフィングの状態は屋根材をめくらないとわからないんです。ちょっと屋根に上がっただけで断定できるものではありません。不安なときは、複数の業者に見てもらって判断を比べるのがいちばん確実ですよ。
ルーフィングの種類と耐用年数のまとめ
ここまで長くお付き合いいただき、ありがとうございます。最後に大事なところを整理しておきますね。
ルーフィングは屋根材の下に敷かれた二次防水層で、屋根材をすり抜けた水を最後に食い止める建材です。外から見えないぶん軽視されがちですが、実際に家を雨から守っているのはこの一枚だと言っても言いすぎではありません。
種類によって耐用年数は大きく違います。標準的なアスファルトルーフィング940は約10年、現在主流の改質アスファルトルーフィングは20年から30年、粘着層付きや透湿タイプなら30年から50年。材料費の差は屋根一棟あたり数万円ですが、寿命の差は数十年です。ここでグレードを落とすのは、あまり賢い節約とは言えないかなと思います。
そして、ルーフィングを新品にできるのは葺き替えのときだけ。屋根塗装ではまったく手が入りませんし、カバー工法では新しい層が上に載るだけで古い層は残ります。足場を組むタイミングは家の生涯で何度もありませんから、そのときにどこまでやるかをよく考えて決めてほしいなと思います。
雨漏りは時間が経つほど下地まで傷んで、修理費用も大きくなっていきます。原因の特定と修理を急ぎたい方は、雨漏り専門の業者に一度相談してみてください。
この記事のまとめ
- ルーフィングは屋根材の下にある二次防水層で、雨漏りの最後の砦になる建材
- アスファルトルーフィング940はJISの最低基準で耐用年数は約10年
- 改質アスファルトルーフィングは20〜30年もち、現在の主流
- 粘着層付きや透湿タイプなら30〜50年の耐久性が期待できる
- グレードによる材料費の差は屋根一棟で数万円程度にとどまる
- 屋根材の耐用年数と揃えて選ぶのが失敗しないコツ
- 交換できるのは葺き替え工事のときだけで、塗装では手が入らない
- 重ね幅とタッカーの打ち方など、施工の丁寧さが寿命を大きく左右する
- 築20年を超えたら下地の点検、築30年超なら工事計画を立てる時期
- 費用はあくまで一般的な目安であり、正確な情報は専門業者にご確認ください
屋根は、直したくなってから直すものではなく、壊れる前に手を入れるものだと私は思っています。見えない部分だからこそ、しっかり考えて選んでいただけたら嬉しいです。何か気になることがあれば、遠慮なくご相談くださいね。


コメント