瓦屋根の葺き直し費用の相場は?工事内容を現役職人が徹底解説

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こんにちは。屋根屋のカズさんです。

「瓦は割れていないのに雨漏りする」「業者から葺き直しをすすめられたけど、葺き替えと何が違うのかよく分からない」。瓦屋根の家にお住まいの方から、こういうご相談を本当によくいただきます。見積書に書かれた金額だけを見せられても、それが高いのか安いのか、そもそも自分の家に必要な工事なのか、判断のしようがないですよね。

瓦屋根の葺き直しは、今ある瓦をもう一度使いながら、屋根の下地だけを新しくする工事です。うまくハマれば葺き替えより安く済みますし、瓦の見た目もそのまま残せます。ただ、どんな瓦でもできるわけではありませんし、条件を間違えると「安く済ませたはずが結局やり直し」ということにもなりかねません。

この記事では、瓦屋根の葺き直しの工事内容と費用相場、見積書の内訳、葺き替えやカバー工法との違い、そして葺き直しを選んでいいケースとやめておいたほうがいいケースまで、現場でやっている職人の目線でまとめました。読み終わるころには、手元の見積書がちゃんと読めるようになっているかなと思います。

  • 葺き直しの工事内容と葺き替え・カバー工法との違い
  • 費用相場と見積書に出てくる項目ごとの単価の目安
  • 自分の家の瓦が葺き直しできるかどうかの見分け方
  • 耐震性を落とさずに工事するためのチェックポイント

瓦屋根の葺き直しとは?工事内容と費用相場

葺き直しは今ある瓦を再利用する工事

葺き直しというのは、屋根に載っている瓦を一枚ずつ手作業で降ろして、その下にある下地をやり直したうえで、同じ瓦をもう一度並べ直す工事のことです。「屋根を一度バラして、中身だけ新品にして、また組み立てる」とイメージしてもらうと分かりやすいかなと思います。地域によっては「葺き替え直し」「めくり葺き」なんて呼び方をすることもありますよ。

なぜこんな工事が成り立つかというと、瓦と下地では寿命がまったく違うからです。粘土を焼いて作る陶器瓦やいぶし瓦は、素材そのものの寿命が50年から100年ほどあると言われています。実際、私も築60年、70年のお宅で現役の瓦をいくらでも見てきました。ところが瓦の下に敷いてある防水シート(ルーフィング)は、材質にもよりますが20年から30年ほどで硬くなって、ひび割れたり、釘穴が広がったりしてきます。木材でできた野地板も、湿気を受け続ければ傷んできます。

ここが多くの方の誤解しているポイントなんですが、雨漏りを最終的に止めているのは瓦ではなくルーフィングです。瓦は雨水の大半をはじいて流す一次防水で、瓦の隙間から入り込んだ水を受け止めて外に排出しているのが二次防水のルーフィング。だから瓦がピンピンしていても、ルーフィングが寿命を迎えれば雨漏りは起きます。逆に言えば、瓦がまだ使えるなら、下地だけ入れ替えれば屋根はまた何十年か持つわけです。

工事では、割れている瓦や欠けている瓦は当然そのままにはできません。再利用できないものは新しい瓦に差し替えます。だいたい全体の1割前後は補充が必要になるケースが多い印象ですね。同じ形・同じ色の瓦が手に入るかどうかは事前確認が必須で、ここを詰めずに工事を始める業者は正直ちょっと心配です。

瓦は一次防水、ルーフィングは二次防水。この二段構えが瓦屋根の基本です。葺き直しは「二次防水をまるごと新品にする工事」だと考えると、工事の意味がすっと入ってきますよ。

ルーフィングそのものの種類や寿命の違いについては、ルーフィングの種類と耐用年数をまとめた記事でも詳しく書いていますので、あわせて読んでもらえたらと思います。

葺き替えやカバー工法との違い

屋根の工事には大きく分けて三つの選択肢があります。葺き直し、葺き替え、カバー工法です。名前が似ているので混乱しやすいんですが、やっていることはまるで違います。

葺き替えは、既存の屋根材を撤去して処分し、下地を直して、まったく新しい屋根材を載せる工事です。瓦から瓦へ替えることもあれば、瓦から金属屋根に替えて軽量化することもあります。カバー工法は、既存の屋根材を残したまま、その上に新しい屋根材を重ねて張る工事。撤去も処分もないぶん安く済むのが特徴です。

ここで大事なことを一つ。瓦屋根にカバー工法は使えません。瓦は表面が波打っていて凹凸が大きいので、その上に新しい屋根材を平らに固定できないんですね。加えて、重い瓦の上にさらに屋根材を載せたら建物への負担が増えてしまう。だから瓦屋根の選択肢は、実質的に葺き直しか葺き替えの二択になります。「瓦屋根にもカバー工法ができますよ」と言ってくる業者がいたら、その時点で知識を疑ったほうがいいです。

工法 工事内容 費用の目安 向いているケース
葺き直し 既存の瓦を降ろして下地をやり直し、同じ瓦を戻す 90万〜160万円 瓦がまだ健全で、下地の寿命が来ているとき
葺き替え 屋根材を撤去処分し、新しい屋根材を葺く 110万〜220万円 瓦の劣化が進んでいる、屋根を軽くしたいとき
カバー工法 既存屋根の上に新しい屋根材を重ねる 85万〜130万円 スレートや金属屋根のとき(瓦屋根は不可)

費用はいずれも一般的な30坪程度の住宅を想定した目安で、屋根の形状や立地、地域によって変わります。正確な金額は必ず現地を見てもらったうえで専門業者にご確認ください。ざっくり言えば、葺き直しは葺き替えより2割から3割ほど安くなる、というのが現場感覚に近いですね。新しい瓦を買わなくていいぶんと、古い瓦を産業廃棄物として処分しなくていいぶんが浮くからです。

ただし、安いという理由だけで葺き直しに飛びつくのはおすすめしません。あとで詳しく書きますが、屋根を軽くして耐震性を上げたいなら葺き替えのほうが合理的ですし、瓦の状態が悪ければ葺き直しても長持ちしません。工法は目的から逆算して選ぶものだと思ってください。

葺き直しの費用相場と平米単価

気になる費用の話をしましょう。瓦屋根の葺き直しの平米単価は、おおむね12,000円から18,000円ほどが一般的な目安です。下地の傷み具合が大きかったり、屋根の形が複雑だったりすると、15,000円から30,000円くらいまで幅が出ることもあります。ここに足場代や諸経費が乗って総額が決まります。

30坪程度の一般的な住宅だと、屋根の面積はだいたい60平米から80平米くらいになることが多いです。屋根は勾配がついているぶん、床面積より広くなるんですね。この面積で計算すると、総額の目安はおよそ90万円から160万円といったところ。二階建てより平屋のほうが同じ坪数でも屋根面積が広くなるので、平屋の方は少し高めに見ておくといいかなと思います。

費用を左右する要因は、主に次のようなところです。まず屋根面積。これは当然ですね。次に土葺きかどうか。古い工法で瓦の下に大量の土が敷かれている場合、その土を降ろして処分する作業が丸々追加になります。30坪の屋根で3トン近い土が出ることもあるので、費用も手間もばかになりません。それから棟の長さと段数。棟は瓦を積み上げて作る部分なので、ここを一緒に取り直すかどうかで金額が動きます。

あとは瓦の補充枚数。降ろしてみたら思っていたより割れが多かった、というのは正直よくある話です。予備の瓦をストックしている業者なら追加費用を抑えられますが、廃番になった瓦だと中古市場から探すことになって単価が跳ね上がることもあります。見積もり段階で「補充が必要になった場合の単価」を確認しておくと、後々もめずに済みますよ。

費用の大枠は「屋根面積 × 平米単価 + 足場 + 土の処分(土葺きの場合) + 棟の取り直し」で決まります。この四つがどう見積書に書かれているかを見れば、金額の妥当性はかなり判断できます。

なお、ここに挙げた金額はあくまで一般的な目安です。屋根の勾配や高さ、道路付け、地域の職人単価によって上下しますので、正確な情報は現地調査をしたうえで専門業者にご確認ください。相場から極端に安い見積もりが出てきたときは、何かの工程が抜けている可能性があると疑ってかかったほうがいいです。

見積書の内訳と足場費用の目安

見積書の見方をもう少し具体的にいきましょう。葺き直しの見積書に出てくる主な項目と、単価の目安を表にまとめました。この形で項目ごとに単価と数量が書かれていれば、まずまず信頼できる見積書だと思っていいです。

項目 単価の目安 内容
仮設足場 700〜1,200円/平米 屋根と外壁まわりに組む作業足場と飛散防止シート
瓦めくり・仮置き 1,500〜3,000円/平米 瓦を割らないよう手作業で降ろし、庭や足場上に仮置き
葺き土の撤去処分 2,000〜4,000円/平米 土葺き屋根のみ。土を袋詰めして搬出・処分
野地板の補修・増し張り 2,000〜3,500円/平米 傷んだ下地の張り替えや構造用合板の増し張り
ルーフィング(防水シート) 800〜2,000円/平米 改質アスファルトルーフィングなどの二次防水
桟木の設置・瓦の葺き戻し 3,000〜6,000円/平米 瓦桟を打ち、瓦を並べ直して緊結する作業
瓦の補充 1枚300〜1,000円 割れや欠けで再利用できない瓦の差し替え
棟の取り直し 8,000〜15,000円/m 棟をいったん解体し、補強金物を入れて積み直す
諸経費 工事金額の5〜15% 運搬費・現場管理費・保険料など

足場について補足しておくと、屋根の上で人が動く工事に足場は必須です。「足場代を浮かせるために足場なしでやります」という業者がいたら、それは労働安全衛生規則の観点からも施工品質の観点からも論外です。足場の総額は建物の大きさにもよりますが、15万円から25万円あたりが一つの目安になります。屋根工事全体で見ると、総額の2割前後を足場が占めることも珍しくありません。足場の考え方は屋根工事の足場費用をまとめた記事にも整理してあります。

「屋根葺き直し工事一式 120万円」のように、内訳のない見積書には注意してください。何にいくらかかっているのか分からないと、他社と比べようがありませんし、追加請求が出たときに反論もできません。項目・数量・単価が明記された見積書を出してもらいましょう。

また、足場代が「サービス」「無料」と書かれている見積書も一度立ち止まったほうがいいです。足場屋さんにはきっちり費用が発生しているので、無料になるはずがありません。どこかの項目に上乗せされているだけ、というのが実際のところかなと思います。

工事の流れと工期の目安

葺き直しの工期は、一般的な住宅で7日から10日ほどが目安です。葺き替えとほとんど変わりません。瓦を降ろして戻す手間があるぶん、むしろ日数だけ見れば葺き直しのほうが長くかかることもあります。雨が続けば当然延びますし、屋根の形が複雑な家ならもう少しかかると見ておいてください。

工事の流れはだいたいこんな順序で進みます。

  1. 仮設足場の設置と飛散防止シート張り(半日〜1日)
  2. 棟瓦の解体と平部の瓦の撤去・仮置き(1〜2日)
  3. 葺き土の撤去と搬出(土葺きの場合、1〜2日)
  4. 野地板の点検・補修・構造用合板の増し張り(1日)
  5. ルーフィングの敷設と瓦桟の設置(1日)
  6. 瓦の葺き戻しと緊結(2〜3日)
  7. 棟の積み直しと最終点検・足場解体(1〜2日)

この中で一番気を使うのが、瓦を降ろしたあとから新しいルーフィングを張り終えるまでの期間です。この間、屋根は野地板がむき出しの丸腰状態になります。夕方に雨が来そうなら必ずブルーシートで養生して帰るのが基本で、ここを雑にやる業者だと工事中に雨漏りさせてしまうことすらあります。天気予報を見ながら作業範囲を区切って進めるのが職人の腕の見せどころですね。

もう一つ、瓦の仮置き場所の確保も事前に相談しておきたい点です。30坪の屋根なら、降ろす瓦は1,000枚前後になります。庭やカーポート、道路の一部を使わせてもらうことになるので、駐車スペースや洗濯物の動線に影響が出ます。ご近所への挨拶回りも含めて、工事前にきちんと説明してくれる業者かどうかは一つの判断材料になりますよ。

工事中は音も出ます。瓦を降ろす音、土を掻き出す音、電動工具の音。平日の日中が中心とはいえ、隣家との距離が近い住宅地では特に配慮が必要です。着工前の近隣挨拶をやってくれるかどうか、これも聞いておくといいと思います。

瓦屋根の葺き直しで後悔しないための判断基準

葺き直しができない瓦の種類

ここが一番大事な話かもしれません。葺き直しができるのは、基本的に粘土を焼いて作った瓦だけです。具体的には、釉薬をかけて焼いた陶器瓦(釉薬瓦)と、いぶして炭素膜をつけたいぶし瓦。この二つは素材そのものが非常に強く、割れていなければ何十年でも再利用できます。

問題になるのがセメント瓦とモニエル瓦です。どちらもセメントやコンクリートを原料にした瓦で、見た目は粘土瓦に似ていますが、中身はまったく別物。表面の塗膜が保護膜になっている構造なので、塗膜が劣化すると素地がむき出しになって水を吸い、内部から傷んでいきます。降ろして戻す作業の途中で割れてしまうことも多く、再利用を前提にした工事には向きません。

モニエル瓦は2010年に国内生産が終了しています。セメント瓦も多くの製品が製造中止になっており、割れたときに同じ瓦を補充することがほぼ不可能です。この種類の瓦なら、葺き直しではなく葺き替えを前提に検討したほうが現実的だと思います。

自分の家の瓦がどれなのか分からない方も多いと思います。ざっくりした見分け方としては、瓦の裏側や小口を見て、表面と同じ色が中まで通っていれば粘土瓦、表面だけ塗装で中がグレーのセメント色なら、セメント瓦かモニエル瓦の可能性が高いです。モニエル瓦は小口が凸凹しているのも特徴ですね。判断が難しければ、点検のときに職人に聞いてもらうのが確実です。

粘土瓦であっても、葺き直しをあきらめたほうがいいケースはあります。寒冷地で凍害を受けて表面がボロボロと剥がれている瓦、全体の3割以上が割れたりズレたりしている屋根、そして廃番で補充用の瓦が手に入らない場合です。特に補充瓦の問題は深刻で、必要な枚数を確保できないと工事そのものが成立しません。降ろしてから足りないと分かるのが一番困るので、着工前に瓦の種類と入手経路を確認してもらってください。瓦の劣化サインの見方は屋根瓦のひび割れやずれの補修費用をまとめた記事でも解説しています。

土葺き屋根は葺き直しで軽くなる

築年数が古いお宅の屋根をめくると、瓦の下からごっそり土が出てくることがあります。これが土葺き(湿式工法)といって、粘土質の土を瓦の下に敷き詰め、その粘りで瓦を固定していた昔ながらの工法です。おおむね1970年代以前に建てられた家によく見られます。

土葺きには断熱性が高いという良さもあったんですが、なにしろ重い。30坪の屋根で葺き土だけで3トン近くになることもあります。屋根が重いと建物の重心が上がって、地震のときに揺れが大きくなります。過去の大きな地震で瓦屋根の被害が目立ったのは、瓦そのものが悪いというより、この土の重さと固定方法の弱さが原因だったところが大きいんですね。

葺き直しの大きなメリットの一つが、この機会に土を全部撤去して引掛桟瓦葺き(乾式工法)に切り替えられることです。桟木という細い木材を屋根に打ち付け、瓦の裏側にある爪をそこに引っ掛けて、ステンレスビスや釘で一枚ずつ留めていく工法。同じ瓦を使いながら、屋根全体で3トン前後の軽量化ができる計算になります。30坪の屋根で約9,000キロが約6,000キロに減る、というデータもあります。

土葺き屋根の葺き直しは「瓦を替えずに屋根を軽くできる工事」でもあります。愛着のある瓦を残したまま耐震性を底上げできるので、費用対効果としてはかなり優秀な選択肢だと思いますよ。

注意点としては、土の撤去と処分に別途費用がかかることです。平米あたり2,000円から4,000円ほどが目安で、30坪なら十数万円から30万円近く上乗せされることもあります。それでも軽量化と耐震性の向上という見返りを考えれば、私は削るべきではない工程だと思っています。「土は残したまま瓦だけ戻せば安いですよ」と言われたら、なぜそうするのかを必ず聞いてください。

ちなみに、土を撤去すると屋根が軽くなるぶん、野地板の傷みが表に出てくることもあります。長年土の湿気を受けていた野地板は想像以上に弱っていることがあるので、めくったあとの状態を写真で見せてもらうといいです。野地板が傷んでいるときの対処については野地板の腐食と修理費用の記事を参考にしてみてください。

ガイドライン工法と耐震性の考え方

瓦屋根の施工には「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」という基準があります。平成13年(2001年)に策定されたもので、業界では通称ガイドライン工法と呼ばれています。要は、地震や台風でも瓦が落ちないように、瓦を一枚残らず釘やビスで下地に留め、棟にも補強金物を入れて固定しなさい、という考え方です。

令和4年(2022年)の建築基準法関連の告示改正で、新築や増改築の瓦屋根はこの全数緊結が義務化されました。既存の住宅をリフォームする場合は義務ではありませんが、せっかく瓦を全部降ろすのなら、戻すときに全数緊結にしておかない手はないと思います。追加費用も、まったくの別工事にするのに比べればずっと小さく収まります。

特に効いてくるのが棟です。従来の湿式工法では、棟を土や漆喰で固めて瓦を積み上げていました。この作り方だと、揺れたときに棟が崩れやすいんですね。台風のあとに「棟だけが崩れている」お宅を見に行くことがありますが、たいていはこのタイプです。現在の乾式工法では、棟の芯になる材に金物を使って屋根の構造体としっかり緊結し、そこに棟瓦をビスで留めていきます。見た目はほぼ変わらないのに、強度はまったく別物になります。

葺き直しの見積もりを取るときは、「瓦は全数緊結しますか」「棟は乾式で取り直しますか」の二つを必ず聞いてみてください。この質問にきちんと答えられる業者は、まず間違いなく瓦の知識がある業者です。逆に「昔ながらのやり方で戻します」としか言わないなら、耐震性の面で一歩遅れた工事になる可能性があります。棟の工事内容については棟瓦の積み直し費用の記事でさらに詳しく書いています。

なお、新しく瓦を補充するときは防災瓦という選択肢もあります。瓦同士を爪で噛み合わせる構造になっていて、従来の瓦より軽く、外れにくいのが特徴です。ただし既存の瓦と形が合わないと混ぜて使えないので、部分的な補充に使えるかどうかは現場判断になります。

葺き直しを選ぶべきタイミング

では、いつ葺き直しをすればいいのか。判断の軸になるのは瓦の状態ではなく、下地の寿命です。瓦がまだ元気でも、ルーフィングは20年から30年で寿命を迎えます。だから築30年を過ぎた瓦屋根は、瓦がきれいでも一度中を見てもらう価値があります。

具体的に葺き直しを検討したほうがいいサインを挙げてみますね。天井にシミが出てきた、瓦は割れていないのに雨漏りする、屋根の面が波打って見える、瓦を踏むとフカフカした感触がある、棟がまっすぐでなくなっている。このあたりが出ていたら、瓦の下で何かが起きていると考えていいです。特に「面の波打ち」は野地板の劣化を示すサインなので、早めに見てもらってください。

逆に、葺き替えを選んだほうがいいケースもはっきりしています。瓦を軽い屋根材に替えて建物全体の耐震性を上げたいとき、瓦の割れやズレが全体の3割を超えているとき、セメント瓦やモニエル瓦で補充材が手に入らないとき、そして野地板の腐食が広範囲に及んでいて構造から直す必要があるとき。こういう場合は、葺き直しで粘っても長い目で見ると割高になります。

迷ったら「瓦をあと30年使い続けたいかどうか」で考えてみるといいかなと思います。瓦の風合いを残したいなら葺き直し、この機会に屋根を軽くして次の世代に渡したいなら葺き替え。どちらが正解ということはなく、目的次第です。

季節については、極端に選ばなくて大丈夫です。ただ梅雨と台風シーズンは屋根をめくった状態で雨に当たるリスクが上がるので、可能なら避けたほうが無難ですね。秋から冬にかけては業者も混み合いますが、天候が安定していて工事は進みやすい時期です。逆に真冬の寒冷地では、朝晩の凍結で作業が止まることもあります。

業者選びで確認したい五つのポイント

葺き直しは、瓦を扱える職人がいないと成立しない工事です。板金屋さんや塗装屋さんが窓口になって下請けに丸投げする、という流れも実際にはありますが、それだと現場の判断が遅れがちになります。業者を選ぶときは、次の五つを確認してみてください。

一つ目は瓦工事の実績です。施工事例に瓦屋根の葺き直しや棟の取り直しが載っているか、自社に瓦職人がいるかを聞いてみましょう。かわらぶき技能士という国家資格を持った職人が在籍しているかどうかも一つの目安になります。

二つ目は見積書の書き方。項目ごとに数量と単価が入っているか、土の処分費や棟の取り直しが含まれているかを確認します。「一式」ばかりの見積書は比較検討ができません。

三つ目は補充瓦の扱いです。同じ瓦が入手できるのか、廃番ならどう対処するのか、追加が出たときの単価はいくらか。ここを事前に詰めておくと、工事中のトラブルがぐっと減ります。

四つ目は施工内容の中身。全数緊結にするか、棟は乾式にするか、野地板は増し張りか張り替えか。前の項目で書いた質問をぶつけてみて、その答え方で技術力はだいたい分かります。

五つ目は保証と記録です。工事後に何年の保証が付くのか、どこまでが保証対象なのか。そして工事中の写真報告をもらえるかどうか。屋根は完成すると中が見えないので、めくった状態やルーフィングを張った状態の写真は、あとから確認できる唯一の証拠になります。

火災保険については、経年劣化による下地の傷みは原則として対象外です。台風や強風で瓦が飛んだといった風災であれば対象になる可能性がありますが、「保険で全部タダになりますよ」と持ちかけてくる業者には注意してください。申請は本来ご自身で行うものです。

補助金は、耐震改修や省エネ改修の枠で自治体が独自に制度を設けている場合があります。屋根の軽量化が耐震改修に該当して補助対象になるケースもあるので、お住まいの市区町村の窓口で確認してみる価値はあります。制度の有無や条件は地域ごとにまったく違うので、正確な情報は自治体と専門業者にご確認ください。

まとめ|瓦屋根の葺き直しは目的から選ぼう

ここまで長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に要点を整理しておきますね。

瓦屋根の葺き直しは、寿命の長い瓦を再利用しながら、先に寿命が来る下地だけを新しくする、理にかなった工事です。費用は平米12,000円から18,000円ほど、30坪で90万円から160万円あたりが一つの目安。葺き替えより2割から3割ほど安く収まることが多いです。

ただし、できる瓦とできない瓦があります。陶器瓦やいぶし瓦なら再利用できますが、セメント瓦やモニエル瓦は補充材が手に入らないので葺き替えを検討したほうが現実的です。そして土葺きの屋根なら、この機会に土を撤去して乾式工法に切り替えることで、瓦を替えずに大幅な軽量化ができます。

工事の質を決めるのは、全数緊結にするかどうか、棟をどう作り直すか、野地板をどこまで直すか。金額の安さだけで選ばず、この中身を説明できる業者を選んでください。屋根は一度直せば20年、30年は付き合うものです。焦らず2社か3社から話を聞いて、納得してから決めてもらえたらと思います。

この記事のポイント

  • 葺き直しは瓦を再利用して下地だけを新しくする工事で、雨漏りを止めているのは瓦ではなくルーフィング
  • 費用相場は平米12,000〜18,000円、30坪で90万〜160万円が目安(正確な金額は専門業者にご確認ください)
  • 瓦屋根にカバー工法は使えないため、選択肢は葺き直しか葺き替えの二択
  • 再利用できるのは陶器瓦・いぶし瓦。セメント瓦やモニエル瓦は補充材が入手困難
  • 土葺き屋根なら乾式工法への切り替えで3トン前後の軽量化ができる
  • 見積もりでは「全数緊結」「棟の乾式化」「野地板の処置」を必ず確認する

屋根のことで迷ったら、まずは中がどうなっているかを見てもらうところからです。判断はそのあとでも遅くありませんよ。それではまた。

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